モンテレッジォ 小さな村の 旅する本屋の物語

 内田洋子著「モンテレッジォ 小さな村の 旅する本屋の物語」は、へたなミステリー小説より面白かった。
 イタリア・ヴェネツィア在住、日本のメディアの為に記事を書いている著者が利用する古書店。店主の父親と話していたら、彼の祖父が創業し、家系はモンテレッジォというイタリア北部の山岳地帯。栗の木しかない山の中の男たちは出稼ぎに外へ出て、それが代々、古書の行商になったという。なぜ古書なのか。謎を解くため、著者は、ミラノにいる村出身者の車に便乗したり、ローカル鉄道でかなり離れた駅まで迎えに来て貰ったりして、30数人しかいない村を訪ね、村祭りにでかけ、村人と話し、歴史を調べ、謎を解いていく。道の途中で村への道路標識脇にヘミングウェイの写真があるので驚いたら、第1回露店商賞の受賞作家だったからと。
 この本がなぜ面白いか、謎を背景に、筆者自身が訪ね歩くドキュメンタリーであること、登場する人物描写が生き生きしていること。グーテンベルグによる活版印刷、持ち運びやすい文庫版の発明など本の歴史も語られ、禁書も含めて、行商や露店商が果たしていく役割が、実は、文化の伝導である本の役割と改めて感じるからだ。
 今、本を読まない若者も増えている。スマホで彼らが読んでいるのは「こたつ記者」が書いた文章だ。自分では現場に行って取材せず、真実かどうか確かめず、テレビや、ネットで流れた話題をまとめ、こたつでも書けるので「こたつ記者」と呼ぶ。それを読む時間は人生にとって無駄でしかないのに。そんなことも考えながら、この本を読み終えた。

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