「老いぼれ記者魂-青山学院春木教授事件四十五年目の結末」(幻戯書房)は考えさせられた。著者早瀬圭一氏は、毎日新聞記者の時、不自然な点が多く心に引っかかっていた事件を、たまたま資料を入手したことから七十歳代になって再取材する。春木猛教授(当時63歳)は1973年教え子の女子大生A子(同24歳)への暴行容疑で逮捕され、「合意のうえ」と無罪を主張したが最高裁の上告棄却で懲役3年の実刑が確定、服役する。A子が、教授に近づいた背景には、後に「地上げの帝王」と呼ばれる早坂太吉や、法学部教授らによる陰謀があり、著者はえん罪と確信するに至る。春木教授や関係者が亡くなった中で、真相を知るA子の現住所を執念で探しだす。ダメ元とかけた電話に本人がでる。真相を語らず、会うことも拒否したが、真相を語るよう迫る筆者に「それが記者魂か」と六十歳代であろうA子は切り返す。
 膨大な裁判記録の他、当時の大木金次郎青山学院長、後藤田正晴内閣房副長官、真相を追求した他の記者や編集者たちらと、著者のやりとり場面が詳しく語られ、事件の真相にだけ関心を向けると冗長な感じさえする。しかし、細部を書き残すことで、著者が生きた時代の、日本とジャーナリズムの状況を記録したのだろう。「老いぼれ」という謙遜語には、俺より若い君たちはどうなのだ、という穏やかな批判も感じられる。
 それにしても、起訴も裁判も不可解だ。起訴事実は①大学特別教室で長椅子に押し倒して行った強制わいせつ、その後二人が別棟の5階の教授研究室に移り②そこでソファに押し倒しての強姦、二日後、③A子が研究室を訪れた際に強姦、の3つで、翌日、A子は自筆カードを添えたバレンタインチョコを教授に届けている。判決は③のみ無罪としたが、A子が早坂のゆすりに乗り、米国留学の援助も期待して、誘導したと考える方が自然だ。警察庁長官から就任し検察、警察機構に絶大な権力を持っていた後藤田官房副長官は渋谷署が逮捕した日、警視庁上層部から報告を受け、起訴して有罪にすべきだ、と即断した。後に、著者に「大学でも普通の会社でも男女のトラブルは、トラブルになった時点で男の負けだ。まして大学の先生が自分の研究室に女子学生を連れ込んだ以上、合意なんて通らないよ」と述べている。それが当時の男社会の見方だったのかもしれないが、権力者が結論を出し、それに検察・警察官僚も裁判所も無理矢理従ったと見れなくもない。
 モリ・カケを巡る首相と官僚の今の状況に似ているが、「あんな奴らと一緒にしないでくれ」と後藤田さんはあの世で怒るに違いない。


5月4日(金)に行われた佐久鯉マラソンで、5㎞一般男子(40歳以上)の部で完走できました。「(同時スタートの)高校生に引きずられす自分のペースで」「走るまで体を冷やさないように」など先輩の皆さんのご助言のおかげです。
完走証にある、独立100周年のエストニア国にはサクという都市があり佐久市と友好関係で、エストニア出身の元大関把瑠都が、例年通り親善大使としてゲスト出演していました。国会議員選挙に出るため年内に帰国するとのことで、今回が見納めでした。
タイムは自宅周辺を走っているのを元に予想していたより3分早く、順位も同じ部門50人には40代、50代の方も大勢いたので、こんなものでしょう。晴れでしたが、恒例のバルーン競技が中止になったほど風が強く、向かい風、でも気温は14度前後で、走るには絶好でした。



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