ピート・ハミルさんが５日、ニューヨーク市の病院で８５歳で亡くなりました。社会面の一番下の小さな共同通信の記事。私には今日の一番のニュースでした。日本では、山田洋次監督、高倉健、倍賞智恵子主演の映画「幸せの黄色いハンカチ」の原作者としてくらいにしか知られていませんが、ニューヨーク・ポスト、ニューヨーク・デイリーニューズ編集長も務めた米国では有名な新聞人。ブルックリンのアイリッシュ系移民の貧しい家で生まれ、板金工や海軍を経るなど、エリートとは無縁の人生を過ごした記者ならではの暖かいまなざしが優れたコラムを生み、その一つが「リーダーズ・ダイジェスト日本版に訳載されたのが山田監督の目に触れて先述の映画になったようです。「新聞と新聞作りに関わる男たち、女たちを愛した」彼の新聞論「ＮＥＷＳ　ＩＳ　Ａ　ＶＥＲＢ」（ニュースは動詞）は１９９８年に書かれたのですが、その中で彼は、当時のメディアが有名人のことを伝えるのに追われ、名前を売るのに躍起となっている不動産会社経営者ドナルド・トランプが自分の生活や離婚についてネタを提供するとまんまとそれに乗ってしまうことを問題にしています。ニュースに値するのは、「動詞」という彼の主張は、口当たりの良いスローガン＝言葉を次々打ち出して国民を翻弄する政治、その言葉に翻弄されるメディアのことも考えさせられます。