コロナの時代の僕ら

猪股征一

2020年07月07日 16:31

 コロナ禍で何かと苛つくことの多い時に、気持ちを静めてくれるエッセイ集です。訳者あとがきによると、著者のパオロ・ジョルダーノ氏はトリノ大学で物理学を学んだ後、「素数たちの孤独」(ハヤカワ文庫)で文壇デビューした、理数系の人物。それ故に、理性的、かつ豊かな文章力で語るから、読者の心に響くのでしょう。
 27本のエッセイはローマで2月29日から3月4日までに書かれているのに対し、著者あとがきは3月20日付、イタリアの死者が中国を越えた段階で書かれています。それだけに、文章の美しさはそのまま、鋭角的に問題点を訴えています。「僕は忘れたくない」と、いくつかを述べる中で、「今回のパンでミックのそもそもの原因が秘密の軍事実験などではなく、自然と環境に対する人間の危うい接し方、森林破壊、僕らの軽率な消費行動にこそあることを。」とあります。その通りですね。たまたま、直前に読んだ「グレタ・トゥーンベリ」に書かれた彼女のストイックな生き方はとても真似出来ないけど、未来の子供たちのために、少しでも環境に優しく生きなければと考えさせられました。あとがき「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」はネットで公開されています。https://www.hayakawabooks.com/n/nd9d1b7bd09a7