T君の花束

猪股征一

2019年12月25日 11:23

 百合の花が開き、香りがすごい。10日前のT君の葬儀で頂いた花束が今も綺麗に咲いている。今年参列した葬儀、お別れの会で最も印象的でした。入り口で喪主の長女夫妻、弟夫妻と自己紹介しあい、T君がひょうきんな顔をしている写真に焼香。振り向くとそこは寿司や唐揚げ、ビールなどがテーブルに並んだ宴席。「やあ」と久しぶりの皆さんと話し、退場するとき全員、立派な花束と返礼品を頂く。
 入り口に並んだ時、戻ってくる方が笑いながらなので不謹慎と感じたのですが、楽しく思い出を語ってもらう狙いだったのでしょう。抗がん剤治療をしているのは知ってましたが、亡くなる20日ほど前のフェイスブックに「午前零時にボージョレ・ヌーボー解禁。コンビニが準備してます。当たり外れがあるので、2本買った方がいいかも」「今年の新酒の軽い味とそれなりのさわやかなうまさが楽しみ」と書き、まだまだ元気と思っていただけに見事だまされました。最後までT君流を貫いたのでしょう。(ちなみに、拙著「実践的新聞ジャーナリズム入門」で、「いつもこれは大変なことではないか、と物事を見ている姿勢は見習いたい」と書いている「『大変だ』の〇〇ちゃん」です)